三十路の喪女がレズ風俗に行った話


 泥酔した勢いでレズ風俗の予約をした。


 私はなかなか強めのコミュ障で、人の目がまともに見れない。趣味はソシャゲ、最近職場にすっぴんボサボサ頭で平然と行けるようになってきて、いよいよ人として終わりが近い。そんなときにツイッターで見かけたレポで興味が沸いたのがレズ風俗だった。

 

 常々、男の人は風俗でお金を払って気持ち良くしてもらえるって羨ましいな…と思っていた。
 こちとら人生の半分以上クソ腐女子だし、いやらしいことに興味はずっとあった。でもリアルの男の人は好きじゃない。怖い。めんどくさい。お金だけの割り切った関係で私もスッキリしたいなぁ、とクソみたいなことをよく考えていた。

 

 一応書いておくと、私はたぶんレズではない。男の人は好きじゃないけど、女の人も別に好きではないと思う。たぶん。
 最後に人を好きになったのは高校の先生。チビでハゲでデブで倍以上年上の人だった。でも得意分野の話をするときの輝いた目が好きで、私も同じようになりたくて、その先生の担当する科目を一生懸命勉強した。でもたぶん、それは『先生に恋してる自分』に酔ってるだけで、その人そのものが好きだったわけじゃないんだろうな…と今となっては思う。もう十年以上前の話だ。
 ちなみにその前は同級生の女の子が好きだった。友達と言えるほどの関係じゃなかったけど、サバサバして中性的で素敵な人だな…と思っていた。恋というよりは憧れに近かったかもしれない。

 今までの人生においての恋愛経験、精いっぱい書き出してもこれしかない。
 三十路でこの恋愛経験のなさはやばいだろ…と自分でも思う。でも人生は少女漫画と違って、ただ生きているだけで恋愛の機会なんてやってこないものだ。二十代前半くらいまで、私はそのことに気づいていなかった。いつか素敵な出会いが降ってくるって本気で思ってたんだけどなぁ。人の目もまともに見れないくせにね。

 ちなみに私の外見はどこにでもいるような普通の顔で、最近ちょっと中年太りで腹が出てきたけどまぁどこにでもいるような体型で、とにかく普通だ。決して美しくはないけれど、外見が原因で恋人が出来ないほど酷くはないと思っている(世の中外見で選別する人は意外と少ないってことも知っている)。だから、私がこんなに寂しい人生を送っているのは外見のせいじゃなくて、この人の目もまともに見れないコミュニケーション能力の欠如が主な原因なんだろうと思う。
 だけどもう、今更このコミュ力のなさはどうにかなるものではない。このままぼーと過ごしていたら十年なんてあっという間で、たぶんすぐに40歳になってしまうんだろうなと感じていた。

 

 このままではいけない。そうだ、レズ風俗に行こう。この発想の飛躍は今となっては正直よくわからない。でもたぶん、夢を見ていたんだと思う。一度誰かと寝たら、私のコミュ力は劇的に向上するのではないか?って。
 だけど知らない人と寝るのは怖いし、だからといって仕事関係や友人の紹介から繋がりのある人と寝たら面倒なこともあるだろう。あいつ処女なんだぜって言いふらされるかもしれない。変にプライドが高いので、それは嫌だった。

 でも女の人が相手なら、男の人よりは怖くないような気がした。それが日常生活で繋がりのある人ではなくて、お金で繋がる関係ならば尚更。
 レズ風俗のことは漫画やレポで見たことがある、というよくわからない安心感もあった。気楽に使っている人もいるみたいだし、怖くないかもなって。

 

 前置きが長くなったけど、そういうわけで私はある日の深夜、レズ風俗の予約をしたのだ。

 


【予約】

 とりあえず予約をしたときのことから書く。

 

 まず最初に、自分が行きやすい地域からお店を選びました。口コミとかは見ずに、本当に場所だけで選んだ。

 次にコース。女の子と外で会ってデートするコースとかもあったけど、コミュ障にこれはたぶん相当厳しい(少なくとも私には)。だからいきなりホテルで会うコースにした。

 指名料は別途必要だし指名をしないという選択肢も勿論あったのだけど、私は在籍者の写真をじっくり見てひとりの女の子を選んだ。
 めちゃくちゃ小顔でカワイイ子。AKBの峯岸みなみちゃんを更に小顔にして綺麗というか美人寄りにしたみたい…と私は初見で思ったので、仮名をみなみちゃんとします(実際はそんなに似てないかも、あくまで私の第一印象です)。年齢は二十代前半だった。
 自分にコミュ力も経験もない自覚は嫌というほどあったので、本当は年上で経験豊富そうな方を選ぼうと思っていた。リードしてもらわなきゃ何も出来ないだろうし。でもどうも私は面食いのようで、見るからに美人な彼女にかなり惹かれてしまっていた。どうせお金を払うなら綺麗な子がいい、と小汚いおっさんのようなことを考えたのも事実です。本当に自分が気持ち悪い。
 十歳も年下の子に気持ち良くさせてもらおうって人としてどうなの?って気持ちはあったけど、彼女もこうして風俗で働いているのだし、きっと私のような喪女を相手にした経験もあるから大丈夫だろうと勝手に考えて、予約のボタンをぽちりと押した。
 お値段は60分コースで入会金とか指名料とか色々込みで2万円+別途ホテル代。ソシャゲに課金する人間なので、安いじゃん…って思ってしまった。気楽にガシャを回して一瞬で消える金額だよこれくらい。
 いま客観的に自分を見てみると、ギャンブル(ソシャゲ)と風俗を嗜むクソ野郎だなぁ…と気づきちょっと落ち込んだけど現実から目を背けてはいけないよね。


 次の日の朝目覚めたときはまだ実感がなかったけど、仕事をしながらメールボックスを見て返信がないなぁと思ったとき、ああ私は風俗の予約をしたのだなと仕事中に何だかドキドキしたことを覚えている。
 音沙汰ないな…と思っていたら夜に電話がかかってきて、落ち着いた感じの女の人から「メールアドレスが違うみたいで返信が送れないんですけど」と言われて慌てた。予約の段階でどれだけテンパってたんだよ。
 正しいアドレスを再度送付したら『キャストのスケジュールを確認中です』みたいなメールが届いた。土日に比べて平日は出勤キャストの人数が明らかに少なかったので、みんな副業的にやっているのかな?それならスケジュールの確認も時間がかかるだろうなぁ、と納得。

 結局前々日くらいになって予約可能の旨を書かれたメールが届き、それを見てから普通のビジネスホテルのショートステイコースを手配した。4000円くらい。ラブホとかレンタルルームのほうがいいのかなぁって思ったけど、なにせ私には経験がない。ビジホなら数えきれないほど泊まったし…とホーム感(?)を優先しました。

 


【当日】

 緊張しながらビジホにチェックインしたものの、都会のビジホはフロントが狭い。おまけにエレベーターはカードキー式で部外者が入れないようになっている。フロントで止められたらどうしよう…って吐きそうになった。
 喉が空っからになったもののホテルの自販機が壊れていてコンビニまで買い出しに行って丁度戻ってきたとき、お店から「みなみさんが到着しました」と連絡が入った。出口が複数あったので、私のいた場所に彼女はいなかったのだけれど、なんとか会うことが出来た。
 茶色っぽい上着にひらひらとしたお洋服を着た彼女は写真で見た通りとても美人でかわいらしくて、私が普通に人生を歩んでいたら絶対に関わる機会なんてないくらいの美人だった。顔が小さくて目が大きくてお人形さんみたい…。
 フロントの目を避けるようにこそこそとエレベーターに乗ったら(バレバレだったと思うけど)、かわいい笑顔でありがとうござますって笑ってくれた。すごくかわいくて、逆に現実感がなくなったのでよかったと思う。

 

 部屋に入ったら、指名までありがとうございます、年上で綺麗な方で緊張します…というようなことを言ってくれていた。実際私が二十歳そこそこのときに十歳も年上の人なんて完全に別次元の人だと思ってたから、このときすごく罪悪感が沸いた。後半はお世辞でも前半はたぶん本音だろう。こんなかわいい子に申し訳ないな…と。お金払えば何してもいいみたいな、さっきまでの自分の考えがものすごく気持ち悪かった。男の人みたいに気楽にそういうことがしたかったんだけど、相手は生きてる女の子なんだからそりゃこんなおばさん相手にさせられたら緊張するよねごめんねって。

 

 レポとかを見て、清算→シャワー→セックス→シャワーという流れなのかな?と予習していたんだけど、最初に言ってしまうと最初のシャワーはなかった。歯は事前に磨いたけど、シャワーも浴びておけばよかった…汗臭くなかったかな…。
 ベッドに二人で座って、めちゃくちゃぎこちない感じでしばらく喋った。私が何も経験がないということを話したとき「えー!?」みたいな反応をしてくれるのがなんだか申し訳ないな…と思いつつ。みなみちゃんは今は彼氏がいなくて、女の子との経験は昔少しイチャイチャする仲の女友達がいた、という話をしてくれた。その子とどうなったのかって聞いたらお互いに彼氏が出来て「私たち友達…だよね?」っていってそのまま今も連絡を取るけど彼女はもうすぐその彼氏と結婚するかも、って聞いて百合厨は切なさに涙しました。なんて美しい百合なんだ…まずもう見た目が綺麗だもん…。


 何か聞きたいことありますか?と言われたので、このお仕事はじめてどれくらいなんですかと聞いたら、登録して一年くらい経つけれどドタキャンも多くてまだ三回目、と言ってて血の気が引いた。こんなにかわいい子でもそんなものなのかと。今私はすごく悪いことをさせているんじゃないか…?って気がしてしまった。


 どうして欲しいですか?と聞かれたけど、こちとら何の経験もないので何もわからない。お任せします、と言ったけれど、向こうも戸惑っているのがわかった。なんの経験もないおばさんを相手にそんなことを言われても困るだろう。顔で選ぶんじゃなかった、と後悔しかけたけれど、目の前にあるみなみちゃんの顔はやっぱり可愛くて、自分の面食いっぷりを嫌というほど自覚した。

 でもそれからみなみちゃんは得意だというマッサージをしてくれて、その後たくさん責めてくれた。これは大丈夫?って聞いていっぱい気遣ってもらって、年下の子にこんな風にされている自分が情けないけど気持ち良かった。やっぱりコミュ障なのでまともに目を合わせることはできなかったんだけど、たまに目を開けると不安そうな顔でこちらを気にしてくれていて申し訳なかった。あんな可愛い子のこんな顔、きっと一生見ることないだろうなぁ。
 小さな口でキスしてくれたり、舐めてくれたり、細い指をいれてくれたり。私はずっとマグロでただ受け入れるだけで申し訳なかったけど、とても気持ち良かったです。
 
 その後ベッドでごろごろして少しお話をした。私はご飯を抜いてきたので最中に腹の虫がぐーぐー鳴っていて色気もへったくれもなかったんだけど、「空腹時のほうが性欲は増すんだよ~」とフォローしてくれたり。でも確かにそうかもしれないなぁ。

 

 せっかくだから一緒にシャワー浴びようか、と二人で狭いビジホのバスタブでシャワーを浴びた。軽く身体を洗ってくれたりとか…。お風呂から出たら丁度60分経っていたので、お話をしながら着替えて。ホテル一緒に出るかどうか聞いてくれたけど、部屋の時間はまだあったから私は後から出ますと答えた。じゃあホテルの出口までお見送りしてそこでお別れしよう、ということに。
 普段はどんなことをするのかとか何が好きなのかとか、他愛もない話をしながらロビーまで降りた。私はフロントのおじさんの目が気になってしまって、あと部屋に備え付けのスリッパのまま降りてきてしまったので、挨拶もそこそこにみなみちゃんとは別れた。もっとちゃんとお礼言えば良かったな…と後悔してる。

 

 

【終わりに】

 生まれて初めて他人と肌を重ねてみた感想は、こんな綺麗な子が相手じゃなかったら出来なかったかもなぁ…というものだった。みなみちゃんがすごく綺麗だったから、現実感のないまま受け入れられたような気がする。女性ならば怖くないかもと思ってレズ風俗を予約したけれど、女性でも相手によっては怖いかもしれない。他人と粘膜同士の接触までするというのはコミュ障の私にとってはすごいことで、怖気づいてしまう。


 だから、みなみちゃんを指名して本当に良かったなと思った。こんな綺麗で優しい子といちゃいちゃ出来るなんて、私がコミュ障じゃなかったとしても絶対にありえなかったはずだ。本当に良かった。

 

 風俗なんて行ってしまったら私は駄目になるんじゃないかと行く前は少し不安だった。ソシャカスで風俗通いとか人間として最低なのでは…?みたいな。でも今となっては、良い経験が出来たなって思ってる。セックスだけじゃなくて、女の子と近い距離でお話が出来るみたいな…私はあまり上手くできなかったけど、コミュニケーション能力のある人ならもっともっと楽しい時間を過ごせるんじゃないでしょうか。風俗ってお金を払って性欲を発散してもらうイメージがあったけれど、性欲以外のところも満たしてもらったと思う。これってたぶん女性同士ならではの感覚だよね。

 

 こんな匿名ブログで書いてもみなみちゃんの目には入らないと思うけど、感謝の気持ちを形に残しておきたかった。
 素敵な初体験でした。本当に、ありがとう。